Jul.21.2017

VISIONARY

NUMBER_18 海野 康志氏 / Laji

フィンランド語で“種”を意味する『Laji』。ヘアデザインの可能性の種をたくさんの人と関わり育てていきたいと大阪・北浜のリバーサイドに実験的なサロンを開いた。それから、3年。次世代トップランナーとして多方面から注目を集めている海野 康志氏を訪ねた。




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海野 康志 Koji Amino
Laji 代表





広告宣伝費はゼロ。既存顧客を大切にする理由とは



2014年、パートナーのEIKO氏と2人からスタートした『Laji』。店舗の3分の1は、大川が一望できるフリースペースになっており、縁側に座っているような気分で四季を感じながら、ゆっくり時間を過ごすことができる。
「大阪中心部の閉鎖的な空間より、10年、20年と継続的に気持ち良く働いていける場所でやろうとこの場所を選びました」と海野氏は話す。

興味深いのは、人気サロンでありながら、開業以来、宣伝広告費はゼロ。ホームページもこの2年間、更新していないことだ。
「今はお金をかけてホームページを作る時代ではないと感じています。店名をGoogleで検索すれば場所や電話番号、営業時間は出てくるので、情報としては十分かと。僕たちの世代は、ホームページを何回もクリックして、中の スタイルを見てという作業が煩わしいのです。見ているものは、InstagramなどのSNS。だからワンクリックで絵を見て、瞬間的、直感的に捉えるものを増やしていかななければならない。SNSは毎日更新をするようにしています」

美容室は「リピートビジネスでしかない」と考え る海野氏。新規をどれだけ獲得するかではなく、 既存顧客に対して何をしていくかをしっかり考えていくことが大切だと言う。
「オープン前に一つだけ決めたことは、割引をしないことでした。500円を値引きするのは簡単だけど、500円をいただくのはすごく難しいこと。そのために、これだけのことをしてくれるサロンなら500円を払うべきだと思わせる“価値”を創っていく必要があると考えました。お客さんを飽きさせず、楽しんでもらえるよう、良いヘアデザイン・パーマ・カラーを入れていくことが一番大切ですが、プラスαとしてお客さんが口コミをしたくなるようなコンテンツを増やしていく。それがウチの宣伝広告費なのです」

顧客を大切にすることで、結果的に月40〜50人の新規客を増やすことにも成功している。




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Laji


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Lajiフリースペース




多職種のクリエイターとコラボし、コンテンツを生み出す



コンテンツとは具体的にどのようなものか。例えば、店内でサービスされるドリンクはカフェさながらに本格的だ。コーヒーは大阪の「Lilo Coffee Roasters」で焙煎した豆を毎回マシーンで挽いて淹れたもの。料理研究家・奥地晋也氏とのコラボで生まれたオリジナルブランド「PULLO」のオーガニック・ドリンク(シロップ)もサロン帰りの手土産として購入することができる。スタッフが仕入れたヴィンテージの服やアクセサリーの販売。グラフィックデザイナーとコラボし、シルクスクリーンの工房を借りてスタッフとハンドメイドをするオリジナルTシャツやトート バッグ等の販売も企画中だ。

また、books+kotobanoieの加藤博久氏が毎月テーマに合わせてセレクトしている古本のブックコーナー。編集事務所「editorialstudio MUESUM」とセレクトしたBGMは、顧客がアップルミュージックにダウンロードできるなど、知的好奇心を満たす様々なコンテンツが展開されている。

「アートディレクターの原田祐馬氏に店舗デザイン・内装をお願いした時、『いま持っているコミュニティーの素晴らしい人たちと創っていきたい』というのが条件でした」
そこからの縁で、サウンドシステムは鶴林万平氏、照明設計は永冨裕幸氏、家具デザインは吉行良平氏、建築 は家成俊勝氏など様々なクリエイターと、楽しいこと、面白いことを規制なくやっていく中で、今の形が出来上がっていったという。

「もちろん、美容室としての営業に加え、レッスンも撮影もやっています。しかし、頭を使い、アイデアを出 すのは空いている時間にできること。コンテンツを継続して行うために、無駄をなくす。評価されるものを厳選していくことを、いつも スタッフと話し合いながらやっています」







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Lajiブックコーナー


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オリジナル・シロップ



サロンは「場」。場を創り、育てることを大切にしたい



salonは『場』である。
「サロンであり続けるためには、場を創り、育てていくことを大切にしたい。ヘアースタイルだけを創る時代ではなくて、感度の高い人が来てくれるように、このサロンには、どういう生活や生き方をしている人がいるのかを表す、スタイル創りをしているということなのです」。

今年4月にオープンした、東京・青山の『RUNO』も基本的な姿勢は変わらない。
「自分が何をするべきかという目的があり、そこに向かう方法が沢山あるだけの話です」。その目的はスタッフ皆に伝えている。

「大切な人を大切にしよう。大切なことを大切にしていこう」。

目的に対しての目標設定は、色々あっていいと海野氏。
「僕は、将来的に何店舗展開したいとか、美容業界を良くしようとか、全くと言っていいほど思っていないのです。今いるスタッフのお客さんが増えて、その子が売れて、いい生活ができる環境を作るという目的だけを考えて、これからもやっていきたいと思っています」




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RUNO店内



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Profile/海野 康志
大阪府内1店舗を経て、2014年、美容の枠にとらわれないサロン『Laji』を大阪に立ち上げ、感性豊かでオリジナリティあるスタイル・世界観が話題を集めている。近隣にアイラッシュ専門店『piha』、2017年4月に 東京・南青山に姉妹店である『RUNO』をオープン。自然が差し込む心地よいサロンとなっている。



Hair&Make Laji
大阪府大阪市中央区北浜東1-17 北川ビル3F
TEL:06-6585-0895
http://laji.jp