FRIXION Number_04 吉見 光史氏(美容師)× 門間 一泰氏 (仙台箪笥店)

FRIXIONSep.27.2021


美容師と地場産業がコラボをしたら、どんな化学反応が起こるのか。 第4回目は宮城県・仙台発。2020年に独立開業したサロン『emma』のオーナー、 吉見 光史氏と創業明治5年の仙台箪笥 製造会社の七代目、門間 一泰氏。 指物・塗・金具の“三技一体”による堅牢な美しさが特徴の伝統工芸と前衛的なクリエイションが織りなすcoolな作品が生まれました。



吉見 光史氏 KOSHI YOSHIMI (写真:左)
1984年9月7日生まれ、山形県出身。仙台ヘアメイク専門学校卒業後、仙台のサロン2店舗を経て、2020年、『emma』をオープン。JHA2019では北海道・東北エリア賞、ジャーナル賞を受賞。JHA2020、ニューカマー オブ ザ イヤーにノミネート、JHA2021、ライジングスター オブ ザ イヤーにノミネート。

門間 一泰氏  KAZUHIRO MONMA(写真:右)
株式会社 門間箪笥店 代表取締役。宮城県仙台市生まれ。2001年、早稲田大学商学部卒後、株式会社リクルート入社。人材領域営業部門、新規事業開発室を経て販売促進のコンサルティングを担当し、営業成績優秀者及び企画優秀者表彰を多数獲得。2011年 株式会社 門間箪笥店入社。2018年 代表取締役に就任。



Hair_Koshi Yoshimi(emma)
Photographer_Tomohiro Negishi(ROOP)
Model_Aki
Location_Sendaitansu denshokan Monmaya

仙台箪笥×仙台のダンサー
対照的なモチーフを融合させた

吉見 仙台箪笥のことを調べてみたら、自分の好きなテイストだったので、作品のイメージが湧きました。女性像は、ダジャレなのですが「仙台箪笥」と「仙台のダンサー」をかけていて、お客さんにダンサーがいたのでモデルをお願いしました。箪笥の色が暗めのえんじだったので、少し映える髪の色にしようと思い、テカテカした人工毛のカツラを使って創りました。

門間 弊社と美容師さんは今までにない組み合わせだったので、どんな感じになるのかと思いましたが、今日、実際に吉見さんにディレクションをしていただいて非常に面白い感じに仕上がっているなと思いました。


二尺猫足両開き


ブランドコンセプトと
ものづくりへのこだわり

吉見 サロンワークは、お客様をキレイにして気分を上げてもらってお帰りいただく。その方の日々の生活が豊かになることを想って、当たり前の仕事をしています。ただ、クリエイションは、普段できないようなことを表現したいという欲求があり、お金も時間もかかることですが好きでやっています。最初に勤めたサロンの先輩が、クリエイティブが好きで海外で勉強したり、撮影をしている姿を見ていたことがきっかけです。自分もクリエイティブをやっている人たちの集まりに行くようになり、感化されて創ってみたら楽しかった。最初の頃はサロンワークに影響している感覚もありました。コンテストで結果が出たら自信になるし、お客さんが喜んでくれたり、宣伝になったりもします。そういった意味でやっていて良かったなと思います。

 
吉見氏のクリエイション作品


emma

門間 弊社は経営理念に「仙台箪笥、そして、日本の職人仕事を通して世界中に豊かさと感動を創出する」を掲げています。日本の手に職を持っている人達は世界的に高いレベルの方が多いので、世の中に広めたいと思っています。家業を継いで10年になりますが、デザイナーとのコラボで『monmaya+』というブランドを立ち上げ、今までにはないデザインの箪笥を創っています。「技能×デザイン=∞」。ものづくりにデザインやクリエイティブが加わるとその可能性は無限になるというコンセプトで新製品の開発に取り組んでいます。


monmaya+のプロダクト


門間箪笥店 本店(仙台箪笥伝承館)


仕事で一番難しいのは「教育」
喜び、やりがいを感じる瞬間も多い

吉見 仕事をしていて一番難しいと思うことは人を育てることです。自分を育てるのは自分が頑張ればなんとかなるのですが…。雇われている頃は責任がないのでそこまで思わなかったことですが、今はいい意味で重荷になりました。仕事をしていて喜びを感じるのは、店を出したり、色々なお客さんが来てくれたり、(一般の)人が出来ない色々な「経験」をさせてもらっていることです。

門間 僕も難しいと思うのは、人を育てることです。弊社もこの10年で人の出入りが多くありました。吉見さんがおっしゃるように自分がやるのは簡単なのですが、誰かに同じような意識を持ってやってもらうのは難しいことですよね。時間がかかるし、頑張らないといけないところだと感じます。弊社は業界の中でも一番古く、他にもう箪笥を作っているところがほとんどないような中、現代の生活様式の中で箪笥を使うイメージをどう持ってもらうか、興味を持っていただくための動機付けが難しいです。また、仕事をやっていて嬉しいことは、お直しの仕事。120年前とかの箪笥を新品同様に直し、お客様の期待を超えた状態で戻せることです。喜んでいただけた時は非常に嬉しいですね。



それぞれの業界で職人の
地位向上を目指していきたい

吉見 40歳までにカット料金を1万円ぐらいまで上げたいと考えています。店をオープンした時に上げて、1年後に1000円プラスしました。昔から先生に「早い、高い、上手い」をずっと教え込まれてきたことと美容師の価値が全国的に低いことが理由です。特に仙台は安売り店が多いので、誰かがやらないと上がっていかない。自分だけ高くしたいわけではなく、美容師たちが豊かになり、一生食べていけるような職業にするためです。賛同した人にも付いてきてもらって、ベーシックになるのが僕の一つの目標です。

門間 僕も職人の地位を向上したいという想いはすごくあります。100年ぐらい前、箪笥職人はなりたい職業の上位だったらしいのですが、社会が複雑化していく中でいつしかスーツを着て仕事をしている人の方が給料が高くなってしまった。工業化が原因だと思いますが、やはり職人が関わらないと良い製品にはなりません。世の中にきちんと認知されるためにはたくさん売らなくてはいけないのですが、仙台でも東京でも難しく、海外出店でようやく兆しが見えてきた状況です。10月の香港出店が今後の命運を分けるかもしれません。海外で展開をしていって、逆輸入的に東京、仙台に鳴り物入りで戻って来たら、見直されるきっかけになると思うんですよね。職人という職業が見直されて作り手が豊かになって、高い価格で商品も売れて、ハッピーサイクルみたいなことができればいいかなと思っています。美容師さんとは近しいものがあるので、目指しているところは一緒だなと思いました。

 

 



emma
〒980-0811宮城県仙台市青葉区一番町2-7-7 太陽南町通ビル5F
Instagram@koshiyoshimi

株式会社 門間箪笥店(仙台箪笥伝承館)
〒984-0061 宮城県仙台市若林区南鍛冶町143
https://sendai-monmaya.com

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