GAMO NEWSのテーマは『Trickster』。
カバー&ヴィジュアルを手がけていただいたのは、
JHA、HHAのコンテストで多数受賞暦のある『NUMBER NINE』のオーナー、吉田 将氏。
「美容を楽しんでほしい」という吉田氏のメッセージが込められた作品を感じてください。
吉田氏がイメージする「Trickster」とは
——テーマからどのようにイメージをされましたか?
「Trickster」とは、世界の秩序を破って、物語を切り開いていく人物のこと。イメージキーワードに「創造性」と「破壊性」という言葉があったのですが、現在のファッションやトレンドを見ると、何かと何かをMIXすることで新しい世界観が生まれていると感じています。そこで、今回は秋冬のファッションも意識しながら、「融合」をサブテーマとして各スタイルを作らせていただきました。表紙の寝ぐせっぽいスタイル、中ページのワイルドでマニッシュなウルフスタイルとアップスタイル。質感もそれぞれ、マット、ウェット、マットとウェットのMIXと変えているのもポイントです。3つとも違う世界観で生きている女性像。「トレンド」と「ヘア」の融合によって「新しい価値観」を生み出せたのではないかと思います。クリエイション、美容の楽しさが伝われば嬉しいです。
表紙の作品
中面の作品(右)
中面の作品(左)
アレンジ・スタイリング・メイクのポイント
——それぞれの作品について詳しく教えてください。
表紙の作品(1枚目)は「ハード」と「フェミニン」の融合。秋冬を意識したファッションに、メイクは眉毛やネイルにトレンド色のグリーンを差し色に。こんな社会情勢なので、笑顔で「HAPPY感」と寝ぐせヘアで「遊び心」のあるスタイルをMIXで表現し、バランスをとりました。
モデルさんのクセ毛を活かしつつ、持ってきたパーマ用のウィッグを少し切り、異なるカールを混ぜながら絶妙な抜け感を作りました。スタイリング剤はドライワックスの「オージス」(シュワルツコフ プロフェッショナル)を使用。マットな質感に仕上げています。
2枚目のスタイルは、「硬い」金属のスタッズに、トレンド色のペールトーンの「柔らかい」色を着色。今までにない新しい価値観を生み出していきたいという想いを込めています。
ヘアはシンプルに彼女の良さが活きるようワイルドさもありながらファッショナブルなメイクアップが映える感じの作品です。スタイリング剤は、「ステージワークストゥルーエフェクター(シャイン)」(資生堂プロフェッショナル)を使用し、ウェットに仕上げています。
3枚目のアップスタイルは、バラの棘にトレンド色の青色をスプレーで着色した「自然」と「人工物」の対比の作品。
スタイリング剤は、ジェルの「ニゼルドレシアジェリーM」(ミルボン)を使いつつ、「ステージワークス トゥルーエフェクター(シャイン)」(資生堂プロフェッショナル)で動かしながら調節しました。サイドは「ステージ ワークス ストラクチャーホールドスプレー」(資生堂プロフェッショナル)も使って固めています。
モデル選び、撮影チームについて
——今回、アジア系(中国)のモデルさんを起用した理由は?
毎月コンスタントに撮っていたのですが、最近はスタッフのサポートに付くことが多くて、自分自身の作品撮りをするのは2、3ヶ月ぶりなんです。ここ何年か欧米のモデルさんばかり起用してきましたが、最近、アジア人っていいなと思っていて、今回のテーマを見た時に、純粋無垢で何色にでもなれる女の子、それも自分たちと同じアジア人で撮りたいと思ったのです。
——今回の撮影チームについて教えてください。
カメラマンの松山さんには6年前から撮影をお願いしています。毎回セッションをするのが好きというか、あまり、「こうしてください」とお願いすることはないですね。自分の感性だけではなく、サポートで来てくれているスタッフやカメラマンさんの感性、モデルさんの気持ちを取り入れながら、一つのビジュアル(作品)を生み出すのが好きなのです。いつも6、7割のイメージを固めてスタジオに入り、現場のテンションや実際のモデルさんを見てセッションする、そういうスタイルの方が多いです。
スタイリストはつけず、衣装はいつも自分たちで用意しています。メイクもスタッフの山本にサポートしてもらいながら一緒に行いました。彼女も作品撮りをするので、任せしています。モデルさんとコミュニケーションを積極的にとってくれるので、いい空気感の中、撮影することができました。
現場のみんなが、笑顔でHAPPYになるように
——では、満足のいく仕上がりになりましたか? また、今回のようなクリエイションの撮影で大切にしていることがあれば教えてください。
最高です!皆さんに協力してもらい良い作品ができました。でも、汗だくでした(笑)。大切にしていることは、自分も含め、現場の全員がHAPPYでモチベーションが上がるような撮影を心がけています。そして、かっこいいデザインを作るためには、最後の最後まで諦めないことです。
クリエイションを通して、美容の奥深さを知った
——クリエイションを始められたのはいつですか?
以前勤めていた美容室で上司に「これからはクリエイションができた方がいい」と言われたのです。ファッションも好きだったし、業界誌を見ていてやってみたい気持ちはあったのですが、やり方もわからないし、自分には出来なと思っていました。でも、6、7年前に、美容師の先輩がきっかけを作ってくれて、そこからのめり込んで今に至るという感じです。
——コンテスト等で結果が出るようになったのは、どのぐらい経った時ですか?
結果が出るようになったのは始めてから2年目ぐらいですかね。2017年のHOKKAIDO HAIRDRESSING AWARD(HHA)でグランプリを受賞し、その流れでタイミングよくJHAにも選んでいただきました。そこからです。
——結果が出る前と後で、ご自身の中で何か変わったことは?
その人(モデル)のこと、ヘア、ファッション、メイク、サロンワークもですが、一歩先、二歩先までを考えながら、髪の毛を触ったり、お客さんやスタッフ、美容師仲間と接してみたり、ヘアデザイナーとしてより深い所まで見ることができるようになったと思います。
昔は髪だけをとにかく一生懸命切っていたのですが、クリエイションをやるようになって、髪の毛1本の方向性だったり、アイライナー1本の意味合いだったり、外見も内面もしっかりバランスを見るようになった。全て、虫眼鏡で見ている感じに変わりましたね。
そうしたら精神的にも変わってきて、周りの美容師の仲間も変わってきて、接している先生たちの言葉も捉え方がだいぶ変わってきたのです。少しずつですが、美容の奥深さ、難しさ、楽しさなど色々な感情の深みを知って、もっともっと探求していこうという気持ちで今、やっています。
若い美容師さんへのメッセージ
——最後に、若い美容師さんへメッセージをお願いします!
「遊び心を持ってやってみよう」というのも自分の中では重要なテーマです。
若い美容師さんと接する機会もあるのですが、自分からワーっと聞いてこないけれど、聞いてみたらすごく深いことを考えている。そこまで思っているのなら、やってみたらいいじゃんと思うのですが、北海道は東京ほどクリエイションが盛んではないので、「一歩踏み出す勇気がない」。でも、勇気というより、遊びみたいな感覚で一歩を踏み出してみたらいいのではないかと思います。
僕はカッコいい、ストイックな作品ばかり撮っていたのですが、最近はもっと人に色々な影響を与えるような作品を作りたいと思うようになり、テイストも深さも少しずつ変化してきています。
ガモウ北海道で「メイクアップアカデミー」という講義をやらせていただいていることも大きいと思います。自分の役割として、今回のような紙面を通してでもリアルでも、若い美容師さんや今までクリエイションをやったことのない美容師さんに美容の楽しさ、クリエイションの楽しさを少しでも伝えていきたい。
クリエイション作品を見て、お客様も喜んでくれますしね。やはり、自分の担当の美容師さんが賞を獲ったり、雑誌に出ていたり、全国で活躍しているのは嬉しいと思います。技術力もコミュニケーション力も高くなるし、クリエイションをやることでプラスになることしかないのです。こういう世界があることを気づいて欲しいなと思います。
COVER LOOK BY
NUMBER NINE _TASUKU YOSHIDA
HAIR&MAKE-UP: Tasuku Yoshida (NUMBER NINE)
STYLING:Ai Yamamoto (NUMBER NINE)
PHOTO:Yusuke Matsuyama(Chiyoda Studio)
MODEL: Lue
吉田 将氏
1985年3月16日生まれ。札幌ビューティーアート美容専門学校卒業。1店舗を経て、NUMBERNINE設立。
2017〜2019HHA 3連覇
2019JHA大賞部門ノミネート
2022 GAMO HOKKAIDO hair make academy主宰
https://www.numbernineofficial.com
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