2027年のガモウ創業100周年に向けた、新感覚のフォトクリエイション企画「TRY_ANGLE トライアングルー共進ー」。第2回目は日本の女性クリエイターを代表する3人が登場。「水」「風」「光」という日常で感じる要素をテーマに3人がそれぞれの世界観を表現。この座談会で初めてお互いの作品を披露し合い、着想やこだわりに触れながらクリエイショントークを繰り広げました。


About Project
企画タイトル「TRY_ANGLE」は、「成長」や「拡大」をもたらす意味を持つ三角形「triangle」に、「try(挑戦)」と「angle(角度、視点)」という2つの単語を掛け合わせて、それぞれの角度・視点で「表現・技術」に挑戦するという意味を込めた造語です。三人のヘアデザイナーが、「TRY_ANGLEー共進ー」をテーマとし、撮影ルールに基づき撮影を行い、後日座談会を実施します。
撮影ルール
・テーマは山田 千恵氏が「水」、イセキ リエ氏が「風」、サトーマリ氏が「光」。それぞれのテーマに基づいてクリエイションを表現する。テーマ以外の制限は設けない。
・4時間以内に仕込み、撮影を終えること
・冒頭1時間は仕込みのみを行うこと(撮影不可)
・3人とも同一のカメラマンを起用する

ー3人で話し合ってテーマを決めて作品撮りをするという、今回の企画の第一印象を教えてください。
山田氏(以下敬称略)ガモウ100周年という特別な企画に出させていただけて本当に光栄だという気持ちと、3人でテーマを一緒に考えるということが初めてだったので、どうなるのかなという気持ち、その両方がありました。
イセキ氏(以下敬称略) 大役を仰せつかったなと。私も最初は大丈夫かな? できるかな? と思いました。
サトー氏(以下敬称略) 私でいいのかなという思いとうれしい気持ちが入り混じりました。お2人は私がずっと背中を追いかけてきたレジェンド。自信がないというのが正直な感想でしたが、お2人に食らいついていこうと思いました。
ー山田氏が「水」、イセキ氏が「風」、サトー氏が「光」を担当し、3人で「TRY_ANGLE」を表現していただくことになりました。
山田 1回目(No.118)はクールな感じの作品だったので、それとは逆にいろいろなものがあってもいいのかなと。水、風、光、という、日頃の生活で感じる現象や視覚的に感じるものを表現するのは女性美容師が得意とすることなのではないかという話になったんです。
サトー 私は最初、枠からはみ出る発想がなかなかできませんでしたが、お2人は様々な角度からアイディアを引っ張ってこられて、「さすがだな」と思いました。
イセキ 審査員のお仕事をさせていただいていて、最近は似たような作品が多いような気がしていたので、もっと自由に自分の”好き”を出せるテーマがいいと思いました。一つのテーマから三つのテーマを連想してそれぞれの”好き”が表現できたと思います。
ーそれぞれの作品のポイントを教えてください。
山田氏「水」
山田 「水」=ウェットヘアが頭に浮かびましたが、髪と水を別ものと捉え、あえてふわふわなヘアに水がかかった雰囲気を出しています。急な雨で濡れたのかな? という想像を掻き立てる作品にしたいと思いました。
サトー これ、水じゃないんですか?
山田 水飴です。ハチミツだととろけ過ぎちゃうし、水飴がちょうどいいのかなと。
サトー なるほど。私も水を髪に乗せて作品撮りをしたことがありますが、こんな風にはならなかったです。
山田 水飴を手に取って髪に乗せる、垂らす、という作業を繰り返しました。一発勝負だから、もう後には引けないという覚悟を持って挑みました。失敗を恐れていたら何もできないですからね。そして前面にアクリル板を置いて、ちょっとだけ水を吹きかけています。
イセキ ドライヘアに水を表現したのがすごい! 雫の感じがキープされているのも素晴らしいです。
山田 水飴は洗うとサッと取れますし、食べてもOKなので、それも選んだ理由の1つです。
サトー 全部が計算されていて、すごいです。
山田 計算できてないなかったかも(笑)。



イセキ氏「風」
イセキ 「風」と聞いて真っ先に思い浮かんだのは、宮﨑駿監督の映画のワンシーンでした。植物の葉や髪が揺れている様子です。でもそれだとありきたりだなと思い、次に思い浮かんだのは最近読んだ本の俵屋宗達の風神雷神の絵でした。強風ではなく静かな風をイメージし「現代の風神」を表現しようと思いました。
山田 静電気みたいに髪が浮いているんですね。これはどうやってつくったんですか?
イセキ 地毛を後ろでまとめ、柔らかくて繊細なダチョウの毛を顔のまわりに巻き付けています。リボンみたいな感じです。
サトー 非現実的なヘアとメイクにカジュアルな衣装を合わせたのが素敵です。画角で引きを選んだのはなぜですか?
イセキ ヘアとファッション、空間や光の加減などをトータルで考えた結果、引きたくなってしまいました。
サトー 「違和感」ってみなさん大事にされていると思うんですけど、やっぱりレジェンドは普通じゃないことをされるんですね。さすがです。
山田 男の子のような女の子のような。謎な感じがいいですね。



サトー氏「光」
サトー 本当はロングヘアは苦手なのですが、「光」を表現するのには影も必要ですし、透き通るようなヘアカラーをうまく表現したいと思いました。この複雑な影はカメラマンさんの発案です。
山田 髪色がとてもきれいですね。海や地球を思わせるような作品です。
サトー ありがとうございます! 7時間かけて3回ブリーチしました。撮影の途中で1回シャンプーをしたことで、ほどよい感じに色が抜けたんです。
イセキ 海の中に光が入ってきたような感じですね。モデルさんにとても似合っています。
サトー ロングヘアの毛束をピアノ線で吊ったりしながら、バランスを取りました。



ー「納得いくものが撮れた」と思う瞬間はどのタイミングですか?
山田 髪も大事なのですが、モデルの表情を大事にしています。モデルの良さが出て、なんかしっくりくるなという瞬間を見逃さないようにしています。
イセキ わかります。私も最初、ずっとモデルが座った状態で撮っていたのですが、ふと立ってもらったところうまくハマり、立ちの写真を選びました。
サトー サイドに振ったものや寄ったものを選びがちなところを、あえて正面を選ぶあたりに勇気を感じます。千恵さんはドライなヘアで水を表現されていて。お2人とも想像の逆を行っていてすごいです。
山田 最近はとても計画的に計算された完成度の高い作品が多く見られますが、現場の様子見て、こっちに転がってもいいかなという、流れに任せながらジャッジする能力も大切だと思います。
イセキ 現場の空気感やモデルさんの雰囲気を敏感に感じ取って「これだ!」と思う瞬間を切り取り、「よし、いいのがあった」と思ったところで撮影が終わります。
サトー 出口が見えなくなったりしませんか?
イセキ 準備をしておくからこそ崩せるというか。私は事前にデッサンを何回も描くのですが、ベースがちゃんとあれば、そこから出したり引いたりできます。
山田 頭と体と必要な物の準備はしておきますが、その場になって結局、使わなかったなということもよくありますよ。
サトー なるほど。準備と瞬発力、この両方が大事なんですね。
ークリエイション上達のヒントは何ですか。
イセキ 若い美容師さんは本当にうまいですし、上手な人の作品を見れば勉強になるのですが、人と違うところを見ることも大事だと思うんです。洋服のシワや木の皮、苔とか。いろいろなものを取り入れることが大事な気がします。
サトー 着眼点が斜め上ですね。私は分析力とかモノマネ力が結構大事かなと思うのですが、そこから一歩、アップデートするのが難しいなと感じています。
山田 まずモノマネができるようになることは大事ですよね。私は美術館も好きですが、まだ出来上がってないものに注目することが好きです。風に舞う葉っぱとか、動きが予測できないものが作品のヒントになります。作品撮りはいつも完璧だとは思えず反省ばかりですが、常にトライし続けることが大事だと思います。
イセキ 私は作品撮りをする際、ヘアを先に決めないんです。光を先に考えることが多いかもしれません。あと、同じことはしないですね。
山田 クリエイティブは特別な撮影というより普段の自分の仕事の延長だと思うんです。普段の生活から女性ならではのアイディアを集め、それをクリエイティブに昇華させると楽しくできる気がします。
ーこれからクリエイションを始める人にメッセージをお願いします。
サトー 最初は下手でもいいから、自分の好きなものに向かって行くことが大事です。女性ならではの感性を生かし、自分の中でブレない何かを持つことが大切です。
イセキ まず基本を身に着けて、そこから崩すと作品撮りが楽しくできると思いますし、幅も広がります。その先に自分のオリジナリティが見えてきます。
山田 デザインをどんどん発想し、モデルの新しい魅力や自分自身の新しい世界を発掘することが自分の財産になります。それを貯めていくことが成長の秘訣だと思います。



山田 千恵氏
『DaB』クリエイティブ ディレクター。神奈川県出身。都内1店舗を経て1995年、『DaB』オープニングメンバーとして参加。著書に『TOUCH』がある。2022年よりJAPAN HAIRDRESSING AWARDSプロフェッショナル審査員。


イセキ リエ氏
『THE REMMY』代表。愛媛県出身。大阪2店舗、都内1店舗を経て2015年、夫である上田 竜二氏と『THE REMMY』をオープン。2016年JAPAN HAIRDRESSER OF THE YEAR(グランプリ)受賞。


サトーマリ氏
『siika NIKAI』ディレクター。茨城県出身。都内1店舗を経て2016年、夫である加藤 龍矢氏と『siika』をオープン。2019年『siika NIKAI』、2024年つくば店『GuGu』、2025年秋に学芸大学に新店舗を予定し、4店舗を展開。



会員登録する
ガモウ全店のcetera beauty shopにてご利用いただけます。
既存のカード会員様も、アプリへの切り替えでおトクにお買い物!


お得なクーポンを配信中!
友だち追加してお得な情報をゲット!