SNIP STYLE 2021年9月号掲載 取材・掲載協力 株式会社コワパリジャポン
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未来ある美容業界、その先へ!
今回のゲストは、DADA CuBiCの古城 隆さん。古城さんが初めて蒲生会長と話したのは「三都杯」の審査員を務めた時。DADA CuBiCを設立した植村隆博さんが亡くなられた翌日のことでした。あれから8年。遺志を継ぎ、新しい美容の形を追い求める古城さんに、蒲生会長が愛情ある言葉を投げかけます。
自分が生きた証を残し、
幸せをたくさん感じられる
自分になることを追い求めたい
古城隆
蒲生 古城さんがこれまで美容師として大切にしてきたことは何ですか?
古城 美容師は人と接する仕事なので、そのために人間性を磨くことも大事ですし、いかに『人のためになれるか』、そこをいちばん大切にしてきました。
蒲生 大事なことですね。美容師が技術を学ぶのは当たり前ですが、技術の背景にはその人の持つ知性や教養、仕事に対するプライドがあることが大事。古城さんはそこを追求してこられたのですね。ちなみにDADA CuBiCに入られて今、何年くらいですか?
古城 2000年入社ですから21年です。元々地元の大分で働いていたんですが、退社した翌日に上京し、募集もしていないのに「入れてください!」とサロンに押しかけました(笑)。2カ月後に連絡が来て、入社できることになって。サロンがオープンしてから3年後のことです。僕は業界誌で植村の作品や記事を見て、この人のもとで働きたいと思ったんです。
蒲生 憧れた人の後を継ぐのは、荷が重かったですか?
古城 そうですね…、最初は「植村の代わりにならなきゃいけない」という気持ちが強かったのですが、僕は違う人間ですし、同じことはできるはずがないと思うようになって。みんなで進んでいくという、それまでとは違った発展の仕方を目指すことにしました。植村が遺していってくれたものを守ろうとずっと必死で、一時期は笑うことさえもできなくなってしまいましたが、最近は「やっと人間ぽくなったね」と言われるようになりました(笑)。
蒲生 ようやく笑顔を取り戻せたんですね。それはやはり、2019年のJHAでグランプリを獲ったのがきっかけですか?
古城 植村が亡くなって、僕自身、色々な見られ方をしているのはすごく感じていて、そういうこととの戦いも自分の中であったんです。色々戦ってきたあとのタイミングでグランプリをいただいて、あの時はとにかく「感謝」しかなかったです。これでスタッフが安心してくれるといいなとも思いましたし、アカデミー(DADA DESIGN ACADEMY)の受講生の方にも、うちを信じて来てくださったことへの感謝の気持ちでいっぱいでしたね。
蒲生 その時の撮影テーマは「変化」だったそうですね。

古城 そうなんです。植村が亡くなってから狂ったように仕事をし続けていたのですが、これではダメだ、自分の生き方を変えなければと考えていたタイミングでつくった作品なんです。若い時はカッコいいものをつくることが名刺代わりですが、そこからさらに上を目指そうとすると、次は精神性や人間性が見られるようになります。そういう気付きや心境の変化が作品にエネルギーとして影響した結果、グランプリをいただけたのではないかと。作品には創り手の思考やエネルギー、生き様が表れ、それらが見た人に伝わるのだということを感じた瞬間でした。
蒲生 すばらしいですね。古城さんは今も美容漬けの毎日なのですか?
古城 僕には元々趣味がなく、30代は9:1くらいで仕事漬けの日々でしたが、今はなるべく家庭のことも考えようと思っています。とはいえ、ストイックに仕事と向き合った時期があったからこそ今があるわけですが。これからさらにステップアップしていくには、今までと同じやり方ではない、違う視点も必要だと思うんです。色々な仕事をさせていただく上で、自分に求められることも徐々に変わってきていて、今までのやり方のままではダメだなと気づきました。それで水泳を始めたり。あのまま今までと同じ日々を送っていたら、自分を苦しめる方向に向かっていたかもしれません。以前は休みがあると何をしていいかわからず憂鬱になり…(笑)。そんな時、大分の実家に帰り雄大な自然を眺めていたら、今の生き方を変えようと思ったんです。
蒲生 大きな心境の変化ですね。最近のコロナ禍でも何か変化したことはありますか?
古城 コロナ禍になったことで一旦、原点に帰って、真に大事なことは何なのか?を考えるいい機会になりました。コロナ禍によってオンラインでの新しいシステムが話題になっていますが、本当にそれをいち早く取り入れないとダメなのか? 変わらないことが大事なこともあるのでは? などと様々なことを考えています。
蒲生 なるほど。リモートだと美容師の本業であるお客様の髪を仕上げることは絶対にできないですからね。
古城 今ちょうどサロンもスタッフも変革期に差しかかっているので、色々と考えながら前進しています。

蒲生 コロナに振り回されることなく着実に前に進んでいるのですね。
古城 そうですね。設立から24年ですが、色々とできあがったところに入ってきたスタッフと、長くいるスタッフとでは違いがありますから、これからも進みながら、また新しい形があるのかなと思っています。
蒲生 とてもいい流れですね。古城さんは上の立場として、下の子たちにどう接していこうと考えていますか。
古城 僕は自分にはもう存分に厳しくしてきたので、これからは人にもっと厳しくできるようになることも大事なのかなと。植村は自分にも人にも厳しい人でしたが、本当の意味でやさしい人でした。自分に厳しくするのって意外とすぐできるんですけど、人に厳しくするのはとても難しい。色々な意味でさじ加減がわかっていないとできないことなので。
蒲生 人に厳しくといってもただ感情で怒るのはパワハラになってしまいますが、愛情を持って真摯に対応すれば問題ないですよね。怒鳴らなくても厳しさは伝わります。では最後に、美容業界は今後、どうあるべきだと考えていますか?
古城 僕はいい時代に美容業界に入れて、若い時からメディアに出るチャンスもいただきました。やりたい仕事ができている今の自分が幸運だと気づくことそのものが、とても大事なことだと思うんです。それに気付かないと、現状に満足できないため、次から次へとずっと何かを求め続けるのかもしれませんが、大切なのはそこに覚悟があるかどうかだと思います。だからこそ美容業界を選んだ人が「幸運だ」と思えるような、環境と憧れがたくさんある業界にしていかないといけないのではないでしょうか。特に若い頃は、すぐにお金を稼げる働き方をしたくなる気持ちもわかるのですが、「本物を目指す大切さ」を僕は訴え続けたいです。本物を目指す人が増える業界になることが重要なんです。単に目先の利益を追求するだけではなく、文化にしていくことが美容師にとって大切なこと。自分の生きた証を残すことやより幸せを感じられる自分になることを追い求めながら、自分ができることで、美容業界に貢献したいですね。
蒲生 すばらしい想いですね。若い時は、憧れがすべてですからね。期待しています。
古城 はい! 貴重なお時間をありがとうございました。
お客様の髪に直接触れるのが美容師の本業です。
リモートでは絶対にできないこと
蒲生茂


古城 隆 (こじょう・たかし)
DADA CuBiCアートディレクター。02年三都杯グランプリ受賞。04年よりD.D.A.講師を務める。サロンワークを中心に、これまで様々な業界誌で テクニックの連載ページや作品ページを担当。また、ヘアショーへの出演や、セミナー講師、コンテスト審査員等も務める。2019年、JHAグランプリ受賞。
Photo / Sugano Yukie
取材・掲載協力




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