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未来をつくるキーマンたちへのインタビュー vol.7

ヘアサロンインタビュー
Oct.20.2025

SNIP STYLE 2022年1月号掲載 取材・掲載協力 株式会社コワパリジャポン

SHOWA → HEISEI → REIWA
未来ある美容業界、その先へ!

29歳で渡英し、ロンドンのSANRIZZ(サンリッツ)で活躍した井手口庄吾さん。数々の海外アワードで輝かしい受賞歴を持つ井手口さんから日本の美容はどう見えているのでしょうか。世界中の美容師と交流のあるおふたりが、日本の未来を語ります。

美容師になったからには
自分のデザインで勝負し続け、
常に世界一の美容師を目指したい

井手口庄吾

蒲生 元々、井手口さんのお父様と付き合いがありました。最初に会ったのはお父様と一緒の時でしたね。

井手口 はい。その後、ガモウさんの本社に初めて伺った際に、会長からBHA※1の歴史をまとめた貴重なBOOKを見せていただき「日本の美容もこういうところまでいけたらいいね」とおっしゃっていたのを覚えています。

蒲生  BHAはJHA※2の5年前に始まったアワードなんですよ。井手口さんは昨年、BHAのファイナリストになられたんですよね。すばらしいです。

井手口 ありがとうございます。BHAは世界のアワードの中でも突出している印象で、自分の究極の目標でもありました。BHAは美容師・サロンを宣伝することにも力を入れているので、そこで名前が挙がれば、アメリカやカナダ、オーストラリアなどの英語圏の美容業界に名前を知ってもらえます。数年前までは、イギリス国内で働いてないと応募できなかったのですが、今は全世界から誰でもエントリーできるようになったんです。

蒲生 たとえばSNIP STYLEに掲載された作品も応募できるのですか?

井手口 発表から1年以内であれば掲載作品もOKです。ただ、応募要項が細かくて厳しいので、それを英文で読み解くのは並大抵ではありませんが…。

蒲生 なるほど。井手口さんは以前、ロンドンのサロンで働いていたから、英語が堪能ですからね。

井手口 SANRIZZでトップスタイリストとして働いていました。帰国後は地元の福岡に戻ってfabric(ファブリック)を設立しましたが、今でもSANRIZZのグローバルアンバサダーを務めています。

蒲生 最初の海外での受賞は何だったのですか?

井手口 2014年にAIPP※3に初めて出した作品がいきなり世界3位になりました。ロンドンから帰国してからも作品撮りはずっとやっていたのですが、日本で発表される作品と比べると僕の作品はラインが強いので、あまり受け入れられないのかなとも思いました。でも、なるべく世界を意識して作品をつくることを自分の特長にしようと思ったんです。それ以降、海外のアワードを中心にずっと挑戦し続けています。

蒲生 JHAでも連続でファイナリストになっていますよね。井手口さんから見て日本の美容師さんたちの作風はどうですか?

井手口 海外の人と育った環境が違うので、いいと思うものも違って当たり前だと思いますが、僕は人種を問わず「誰が見てもいい」というものが世の中にはあると思っています。日本はトレンドを意識した作品づくりが多いように思いますが、海外の美容師は自由度が高いんです。日本の美容師は平均的にレベルが高く優等生なのですが、海外の美容師は想定を超えるアイディアを持っている。そこに大きな違いを感じます。

蒲生 なるほど。Best of the Best Awards(アイルランド)では3年連続トップの快挙でしたし、海外のアワードの審査員もされているんですよね。

井手口 はい。BHAをきっかけに、日本人で初めてNAHA※4の審査員を務めることになりました。

蒲生 色々な作品を見ていて、アジアの方々の作品はいかがですか。

井手口 台湾、中国が伸びていると感じています。特に台湾はクリエイションのレベルが高いですね。トレンドヴィジョンの世界大会も台湾の美容師は常に上位に入っていますし、中国の美容師の活躍も目覚ましいので、日本は危機感を持って挑んでいかないと、世界から置いていかれてしまいます。中国の美容師は「倒れるまで勉強する」というくらいの意気込みで学ぼうとしていますが、今の日本人はそういった意識が薄くなっている気がします。今は実際に海外に渡航しなくてもWebで様々な情報を得ることができますから、もっと世界に目を向けて、海外のアワードに挑戦してほしいと思います。

蒲生 国内だけでやっていたら、それでいいと思ってしまいがちですよね。

井手口 そうなんです。海外の人と交流を持つと色々なアイディアや可能性と出合い、発見も多いんです。毛先のうまさだけで言えば日本の美容師のほうが上かもしれません。でも海外では「形」が重要視されるので、違いを感じると思います。日本だとある1つの質感が流行るとみんな同じ質感を目指す傾向にあり、作品も似たような質感になりがちで、ディテールへのこだわりが強いように感じます。形の根幹をきっちりと決めるというより質感まで繊細につくり、スタイリング剤やアイロンが使いやすいようにするのがカットのベース、というのが日本流。海外では髪質が細く柔らかいこともあり、形をしっかりとつくってあとはスタイリング剤でつくる、そこまで質感にはこだわりません。素材を生かす方向です。

蒲生 その違いを体得できれば、世界中どこでも通用しますね。

井手口 髪質に対して自信が持てると思うんです。日本だけだと日本人の髪質しか知らないので、外国人の髪を触った時に違いを受け止められません。それまでに培ってきた技術ではうまく切れないこともあると思います。僕はロンドンにいた頃、お客様をアジア人に固定すると顧客がそれ以上増えないので、ありとあらゆる人種のお客様を担当して人種を超えた技術と接客を見出そうとしました。売上NO.1になるのはどうしたらいいのか、それを模索していたので、おかげで自信がつき、今も年に数回ロンドンに行って(コロナ禍以前)カットしても、何の違和感もありません。どんな人でも同じ髪として扱う意識ができました。

蒲生 その自信が今年のオルタナティブヘアショーで大トリを務められたことにも生きているのですね。

井手口 そうですね。僕はSANRIZZに在籍した時からほぼ毎年見ているのですが、コンペティションに出場してずっとファイナリストとしても上位に選んでいただいたことが評価され、ヘアショーに出させていただくことになったんです。日本のエッセンスを直球で出すと浮いてしまうので、できるだけ調和するような形で表現しました。

蒲生 井手口さんはクリエイター活動を中心として自己表現し、それがサロン運営にもよい影響を与えているのではないですか。

井手口 そうですね。世界のアワードを獲った人の店を見たいという人に来てもらいたいですし、世界と日本のクリエイションをつなげられるよう、架け橋になりたいと思っています。ちなみに会長はこれから先、どんな美容業界になるとお考えですか?

蒲生 それはわからないですね。それぞれが自分の感覚で掴まないといけません。何が出てくるのかわからない中でも美容師の仕事の本質は変わりません。とにかく自分の好きな道を感性も含めて発展させていくことが大事だと思います。

井手口 なるほど。僕はデザインで勝負し続けるのが夢。平行してお店ももちろん大切ですが、美容師になったからには常に世界一を目指したいと思っています。本日は貴重なお時間をありがとうございました。

※1 BHA…ブリティッシュヘアドレッシングアワード
※2 JHA…ジャパンヘアドレッシングアワーズ
※3 AIPP…AIPPワールドヘアドレッシングアワード
※4 NAHA…ノースアメリカンヘアスタイリングアワード

時代の流れは自分で掴み取ること。
美容師の仕事の本質は変わらない。

蒲生 茂

井手口庄吾 (いでぐちしょうご)

『fabric』代表。福岡県生まれ。福岡美容専門学校卒業。イギリスのサロン『SANRIZZ』でトップスタイリストとして活躍。帰国後、福岡にて『fabric』を設立。現在はSANRIZZ グローバルアンバサダーも務める。BEST OF THE BEST AWARD(アイルランド)インターナショナル部門で史上初の3連覇達成。BHAファイナリスト。NAHA(アメリカ)で日本人初の審査員を務めるなど世界の美容業界で活躍中。JHA大賞部門ファイナリスト多数。2021年10月のオルタナティブヘアショーライブ配信では、世界の大トリを務めた。

Photo / Sugano Yukie

取材・掲載協力

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