SNIP STYLE 2022年2月号掲載 取材・掲載協力 株式会社コワパリジャポン
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未来ある美容業界、その先へ!
JHAをはじめ様々なコンテストでの入賞歴を持ち、セミナー講師やコンテストの審査員など、多方面で活躍中の豊田永秀さん。17年前に独立し、順風満帆な船出…とはいかなかったことも。コロナ禍を経て、美容室はどうあるべきなのか。数多くのサロンを長年見てきた蒲生会長が答えを導き出します。
インチキ美容師になるな。
本尾のを発信すれば
必ずお客様が戻ってきてくれる
豊田永秀
豊田 2005年にSTRAMAをオープンした際、蒲生会長がサロンに来てくださいました。
蒲生 そうでしたね。しっかりした経営をやっていて、才能のある方だなという印象を持っています。
豊田 ありがとうございます。
蒲生 コロナ禍で変わったことはありましたか。
豊田 色々あります。飲みに行かなくなりましたし、キャンセルになった仕事もありましたから休みが増え、それによって家族と過ごす時間も増えました。ヒマな今しかないと思い、家を建てたのですが、人と会えない状況の中で何か話を進めなければならない難しさを痛感しました。そんな時、普段それほど連絡が来ない師匠やお世話になっている方々から電話がかかってくることが続き、人とのつながりや対話を改めてきちんとしなければと感じたんです。
蒲生 みんなが豊田さんを心配してくれたのですね。経営面ではどうですか。

豊田 コロナ前は利益よりも売上重視で、僕もスタッフも給料をタイトにしてできるだけたくさんの人を入れて育てようと考えていたのですが、今は売上より利益重視にチェンジし、たくさん人を雇うというより、今いるスタッフを豊かにすることを優先しています。最近、給料面を見直したばかりです。
蒲生 それは素晴らしいですね。
豊田 働き方を朝型に変え、勉強会も朝にして夜はなるべく早く帰らせるように営業時間も変更しました。僕自身も朝型に変わり、21時には寝て5時に起き、映画を観たり本を読んだり筋トレしたりしています。
蒲生 大きな改革ですね。
豊田 独立してからずっと、「人」で悩み続けてきたなという思いがありまして。当初はスタッフを絶対スターにしたい、自分の持っているものはとことん伝えたいという思いが強すぎて、ちょっとさぼったり失敗したりする人がいると許せない気持ちになってつい怒ってしまい…。今ならパワハラですが、当時は教育だと勘違いしていたんです。すると、技術はうまくなるけれど辞めていく人が後を絶たず、信頼していたスタッフに裏切られたという意識になったこともありました。そんな時、前サロンの師匠、DaBの八木岡さんから「お前は経営を勘違いしている」と言われたんです。それと同時にすごく心配してくださり、援護射撃するからがんばれと言っていただき、改めて人への感謝の気持ちを持つことや誠実に人と向き合うことの大切さに気づかされました。以後、ただ怒るということは止め、自らの怒りに打ち勝ち、人と向き合って対話するようになりました。
蒲生 自分が体験しないとそういうことにはなかなか気づけないですよね。かつて徳川家康は家来に「人が生きていくということは、重い荷物を背負って歩いていくようなもの。人への怒りは自分に返ってくる、怒りは敵である」と言ったそうです。それを若い時に聞いてもピンとこないですが、ある程度の年齢になれば身に染みます。
豊田 なるほど。たしかにそうですね。

蒲生 今後のサロン運営はどのようなイメージを持っているのですか。
豊田 楽しいと思うことをやりたいですね。本当は店舗展開を考えていたのですが、コロナ禍もあり店長たちと相談して、店舗を拡張することにしました。スタッフたちが大きな夢を抱いているのであれば、僕は叶えてあげる側。僕の夢を叶えてくれるのがスタッフなのではなくて、スタッフの夢を叶えるのが僕。そこにようやく気付き、みんなの意見を積極的に聞くようになりました。自分でも僕は変わったなと思います。
蒲生 そこで働くスタッフ1人ひとりに違った人生があり、1人ひとりの自己実現があります。先に構想があってそのためにどうするか考えるやり方もありますし、みんなの意見を聞きながら進めるやり方もあります。どう束ねるかはサロンによってみんな違うと思うんです。人の答えは自分の答えじゃないですから。
豊田 会長は長い間、様々なケースのサロンを見てきていらっしゃるから、本当に勉強になります。
蒲生 いやいや、若い人と年配者とでそんなに考え方が違うわけではないと思いますよ。コロナ禍となっても自分ができることをがんばるというのは同じですしね。豊田さんから見て今の若い人はどう映っていますか。
豊田 そうですね。例えば、SNSなどツールの使い方はうまいと思いますがただ、そこで発信されるスタイルなり技術には本物と偽物があります。僕らはプロだから見ればわかりますが、お客様はわかりません。でも1回来店すればわかります。なので、僕らのようなサロンは逆にチャンスだよとスタッフには言っているんです。なぜなら本物を発信しているという自負があるから、本物であれば必ずお客様がリピートしてくれるからどんどんやりなさいと。
蒲生 若い世代の美容師に伝えたいことは?
豊田 「胸を張って自分は美容師だと言える自分であれ」。これは僕がずっと昔から言い続けていることです。インチキ美容師になるなよと。若い時は技術を学ぶことなど色々なことが大変でくじけそうになったり、悩んだりすることもあると思いますが、美容を長く続けているとすべてが許せるようになります。努力や我慢した分だけあとで自分に返ってくることを実感しています。この仕事を続けてきてよかったなと。たとえ落ち込んでいたとしてもお客様は来てくれて、他愛もない話で盛り上がり、お客様に喜んでいただけるいい仕事だと思います。
蒲生 そういう声はかなり多く聞きますよ。僕も、美容師はやり続けて悔いのない仕事だと思います。
豊田 会長から見たら僕はまだまだ若造ですが、時と場合によっては「レジェンド」とか「大御所」なんて呼ばれてしまうんです(笑)。いやいや、僕はまだ若手でいさせてよと。若い子たちが僕を押し上げてしまうんですよね。
蒲生 若い子が突っ張っちゃうのは仕方ないですよね。若い子は経験値が低い分、ある意味みんな世間知らずですから(笑)。でもその若者を知らないと古いって言われちゃう。とにかく、大変な中に楽しみを見つけることが大事です。豊田さんは今、子育てが楽しみではないですか?
豊田 そうですね。僕にとっては子育ては最大のクリエイションだと思っています。髪型を作ることだけがクリエイションなのではなくて、料理もゴルフもDIYも全部クリエイション。コロナ禍で時間ができたので子どもの勉強机も作りました。こうして一旦ヘアから離れる時間を作ったことで、また最近お客様が戻ってきて改めて「豊田さん、うまいですね」と言われることが多くなりました。30年美容師をやっていますが、今がいちばん楽しいです。
蒲生 それはいいですね。子育てとは、他人の子を育てるのも一緒ですよ。スタッフを大事にしてください。
豊田 はい!今日はありがとうございました。
美容師はやり続けて悔いのない仕事。
大変な中に楽しみを見つけることが大事
蒲生茂


豊田永秀 (とよだながひで)
『STRAMA』代表。2005年代官山にSTRAMA設立。現在は港区南青山で展開。サロンワークを中心に業界誌、一般誌の撮影、セミナー講師、商品開発、広告、CM、アーティストのヘアメイクなど多岐に渡り活躍中。美容以外にも植物やアンティーク家具のバイヤー、グラフィックデザインのプロデュースなども行っている。
Photo / Sugano Yukie
取材・掲載協力




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