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未来をつくるキーマンたちへのインタビュー vol.10

ヘアサロンインタビュー
Nov.10.2025

SNIP STYLE 2022年4月号掲載 取材・掲載協力 株式会社コワパリジャポン

SHOWA → HEISEI → REIWA
未来ある美容業界、その先へ!

夢と希望を抱いて上京し、憧れのサロンで働いて、今では25人のスタッフを抱えるCocoonオーナーとして活躍中のVANさんが今回のゲスト。技術への強いこだわり、スタッフへの熱い想い、美容業界への鋭い意見を持つVANさんに、蒲生会長がエールを送ります。

美容師の「職人としての想い」に
もっと光を当てるべき。
技術に対しての対価ですから

VAN

蒲生  VANさんは長崎県出身でしたよね。長崎のどこの市ですか?

VAN はい、長崎市内です。

蒲生  僕は昭和30年代後半から40年代にかけて毎月、九州一円を営業しに行っていたんですよ。長崎市には100回くらいは行きました。

VAN 頻繁にいらっしゃったのですね。僕は美容業界に飛び込み、1店舗を経て福岡のTONI&GUY JAPANで働いていました。その頃、八木岡さん(DaB代表の八木岡聡氏)の記事を見て感銘を受け、とにかく会ってみたいと思いましたが、当時つては全くなく、記事が載っていた編集部に自分の連絡先と作品を添えて八木岡さんに渡して欲しいと送ったところ、1年後くらいに本当にお電話をいただいたんです。ある日練習を終えて夜12時頃に帰宅したら「八木岡です」というメッセージが自宅の留守電に入っていて。うれしすぎて深夜にもかかわらずすぐ電話をかけてしまいました。

蒲生 それでDaBに入ることを決意したのですね。

VAN はい。八木岡さんが帰国されてDaBができると聞き、上京します!弟子にしてください!と言ってDaBのオープニングスタッフとして入らせていただきました。本当にラッキーだったと思います。

蒲生 一緒に働いてみてどうでしたか?

VAN 人生の中でいちばん怒られましたね(笑)。仕事の考え方から、美容師としての心構えも全部、僕の出来が悪すぎたんです。食べ方や立ち振る舞いに至るまでダメ出しされました(笑)。東京という場所で勝負するために必要なことや、1人の人間として根本的なところから叩き直していただきました。

蒲生 辛くはなかったですか?

VAN 傷つきましたし、自信も失くしました。でも、元々なんの根拠もない自信だったから結果的によかったのだと思います。きちんと叱っていただけたから今があるのだと。八木岡さんは今でも圧倒的に怖い存在…(笑)。中途半端な気持ちで何の裏付けもないことを見透かされていたのだと思います。

蒲生 なるほど。DaBにはどれくらいいたのですか。

VAN DaBは僕が思い描いていた通りの“ザ東京サロン”で、憧れた世界そのものでした。2年半くらいお世話になりましたが、心が折れてしまったのだと思います。その頃、雑誌で山下さん(Double代表の山下浩二氏)のほっこりとした笑顔の写真を見てピンと来て、(当時の)HEARTSに入る縁をいただきました。

蒲生 師匠に恵まれていますね。

VAN そうなんです。福岡時代も月に3回ほど雑賀先生(元TONI&GUY JAPAN代表の故・雑賀健治氏)が来るたびにメインアシスタントに就かせていただきましたし、本当に人の縁を感じます。僕に才能があるとしたら「人との縁」ではないかと(笑)。八木岡さんからはメンタル面を、山下さんからは技術面を鍛えていただき、育てていただきました。実はそのお2人からまったく同じことを言われたことがあるんです。「VANちゃんは、鼻はいいけど詰めが甘い」と。

蒲生 まったく同じ言葉とは、面白いですね。VANさんの技術は山下さんからの教えがベースになっているのですね。

VAN そうですね。Cocoonの売りであるノンブローカットのベースも、その教えと考えがあってのこと。ブローしないで済むようにカットすることにこだわってきたという過去形ではなく、現在進行形でこだわっています。ヴィダル・サスーンが作ったカットのスタンダードが美容業界の基盤になっていますが、現役の僕たちはもっとその先を追求しなければいけないと思うんです。それをロジカルにまとめて後世に伝えていけるだけの「ニューベーシック」を作りたい。それくらいカットの価値にこだわりたいんです。

蒲生 素晴らしいですね。戦後、美容室でパーマをかけてセットするのが当たり前の時代にヴィダル・サスーンがカットで髪型を作ることを発表しました。そして今の時代に必要なことは、その先を考えることだと僕も思います。

VAN 再現性とか手入れが楽など、口で言うのは簡単ですが、その人が家でアイロンを使うことが前提ではなく、様々なことを考えてカットできなければいけないと思うんです。

蒲生 そこまで考える美容師の仕事は本当に深いと思います。だからお客様が来てくれるのでしょうね。

VAN とはいえ、コロナ禍に銀座に出店した時は厳しい現実に直面し、久しぶりに保管しておいた20数年前の八木岡さんの留守電の声を聞き直してみたり、山下さんの言葉を思い出してみたり、原点に立ち戻ろうとしました。本質の大切さを改めて感じました。昨年からガモウさん主催のエリアサーキットの審査をさせていただいていますが、ベーシックを深めていく本質があり、とても意味のある大事なコンテストだと感じています。

蒲生 本質を追求することで何が大切なのかに気づけますよね。

VAN はい。僕は美容師の「職人としての想い」にもっと光を当てるべきだと思っています。最近、「技術に対して対価をいただく」という考えではなく、「対価をいただくための打ち出しをする」という風潮が気になっていて。順番が逆と言いますか。本当はポップコーンの原材料や作り方にこだわらなければいけないのに、上から振りかけるフレーバーばかりに注力するというような…。みんな“着色”することに一生懸命で、何か大切なことを見失いがちだと思うんです。自分もそういう鬱陶しいことを言う歳になったのかな?早い結果を求めて、ストイックに突き詰めることがカッコ悪いという潮流は業界として危ないと思うんです。

蒲生 たしかにそうですね。全国に美容室が約25万軒あるので過当競争の中にありますから、色々な考えの人がいるとは思いますが、個々の努力や美容師という職業観の確立は必要だと思います。自分の職業をまっとうし、自分の得意技で生きていくことが大切ですね。

VAN 僕はCocoonの売りであるノンブローカットを大切にして、その価値をきちんと伝えていきたいです。僕が死んでもCocoonを残したいんです。だからチームを強くしたいですし、強くするためにはバトンを繋いでいかないといけないと思っています。Cocoonのノンブローカットを美容師さんに認めていただけるところまで昇華させることが目標です。

蒲生 お店が継続して経営を続けられることと、自分自身が売れているということは別の話です。一世を風靡した美容室が消滅してしまったり、逆に代替わりがうまくいって再び盛り返したり、色々な事例を見てきましたが、1つ言えることは技術はなかなか継承できるものではないということでしょうか。

VAN 確かに難しいことですよね。僕が言うのもおこがましいですが、自分たちが習ってきたベーシックだけではこの先、対応ができません。ヴィダル・サスーンの型があり、先人たちの教えがあるからこそ、その先にある「もうひとつのスタンダード」を作りたいんです。ブームで終わるスタッフではなく、末永く活躍できるスタッフを育て、技術を後世に繋いでいきたいですね。

蒲生 素晴らしい目標ですね。期待しています。

VAN 今日はありがとうございました。

個々の努力や、美容師という職業観の
確率は大事。自分の職業をまっとうし、
自分の得意技で生きて欲しい

蒲生茂

VAN(ばん)

Cocoonオーナースタイリスト。長崎県出身。大村美容専門学校卒業後、福岡市内の『TONI&GUY』に勤務後、上京。『DaB』、『HEARTS/Double』を経て、2009年東京・表参道に『Cocoon』オープン。現在は表参道と銀座に店舗を構える。ノンブローカットを提唱し続けている。

Photo / Kagohara Kazuya

取材・掲載協力

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