SNIP STYLE 2022年6月号掲載 取材・掲載協力 株式会社コワパリジャポン
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未来ある美容業界、その先へ!
5月30、31日に開催されるアジアビューティエキスポへの出演を間近に控え、サロン設立20周年を迎えた松永英樹さんが今回のゲスト。美容師と経営者をどう両立すればいいのか、美容業界を豊かにするためにどうすればいいのか。蒲生会長が松永さんの背中をそっと押します。
コロナ禍でどこにもいけなくてもサロンには行く。
それほど美容とはお客様にとって価値のあること
松永英樹
松永 2002年に独立した際、会長にオープニングに来ていただきましたね。その節はありがとうございました。
蒲生 もう20年になるのですね。
松永 そうなんです。「やりたいことは全部詰め込もう」というつもりでオープンしたのですが、予想外に内装費がかかってしまいまして。でも我ながら若い頃のパワーってすごいなと思います(笑)。当時は会う人全員に「必ずキレイにします。僕に担当させてください!」と言っていて(笑)。技術者と経営者、2つのことを同時にやらなければならなくなり、まだ30代前半の心も技術も未熟な時に色々とサポートしていただき、本当に感謝しています。
蒲生 こちらこそありがとうございます。こうして成功を収められたのはすごいことだと思います。
松永 いえいえ。それまでお世話になっていたPEEK-A-BOOを辞めて独立するにあたり、先輩方と時間をかけて話し合いをし、気持ちよく送り出していただいたことが僕にとって大きかったです。僕は辞めても美容業界の表通りの真ん中を堂々と歩きたかった。端を歩いたり、隠れたりしたくないと思いました。何もできない頃から面倒を見てもらい、一人前の美容師にしていただいたPEEK-A-BOOの先輩方は、親と同じくらいの存在。川島先生は僕にとって美容業界の父親なんです。
蒲生 素晴らしい考えですね。PEEK-A-BOOに入られたのも川島先生への憧れからですか?

松永 はい、それもあります。カットの素晴らしさが突出したサロンなので、そこに入れたら僕もカットがうまくなれると思いました。
蒲生 そこで美容師としての基盤ができたのですね。
松永 そうですね。朝から晩まで予約表がいっぱいの先輩方を見ながら、お客様に支持される美容師には何が必要なのかを必死で掴み取ろうとしていました。そこで僕がたどり着いた答えは2つあります。1つは技術力。単にカットがうまいというだけでなく、お客様が求めている以上の感動を与えられるようなデザインをつくる力です。もう1つはホスピタリティです。人としての温かみ、深み、チャーミングな部分、笑顔…そういう人間力も大事だと思いました。
蒲生 なるほど、本当にそうですね。技術を学ぶだけではなく、その上で一人ひとりに対してどうデザインするかが肝心です。さらに複数の人と一緒にサロンを回していく場合には、それぞれの個性をどう見極めるかも必要になります。
松永 おっしゃる通りです。美容師個人としては正直、もっとできそうな感じもするのですが、複数のスタッフを束ねるのは本当に難しいですし、パワーが必要です。戸惑いや、わからない部分もありました。また、一人ひとりの個性に合わせた場所をつくってあげなければいけませんし、教育もそうですがサロンを経営するというのは並大抵のことではありません。PEEK-A-BOO時代に店長を務めていた時期がありましたが、それはあくまでも「傘」の下でやっていたことなので、リーダーとして輝けばみんながついてきてくれると思っていました。それと経営ではやはり違います。
蒲生 でもお店は順調ですよね。
松永 おかげさまでABBEYが3店舗、企業とコラボしているお店が2つあります。10名ほどで始めたのですが、2022年4月に新卒が入って63名になりました。僕はまだ技術者でもありますが、経営に専念すればスタッフも店舗ももっと増えていたかもしれないと思います。とはいえ、美容師になろうと思った時は将来、経営者になることは考えていなかったので、まだ「美容師でいたい」という気持ちがあり、そこに葛藤はあります。

蒲生 僕は60数年、色々な美容師さんと出会いましたが、結局、経営の答えはないんです。時代が動き、自分も年齢を重ね、その中で「こうすれば絶対大丈夫」などという方程式はありません。常にケースバイケースの中で正しい道を探っていくしかないのです。自分がなぜこの仕事を始めたのか、なぜ独立したのか、そういう自分の「原点」を忘れないこと、それがいちばん大事だと思いますよ。
松永 なるほど。そうですよね。ありがとうございます。
蒲生 人としての「正義」を大事にしてほしいと思います。経営において特に大変な時期はなかったですか?
松永 1年目は、すべてのスタッフを面接で選んだので、それぞれ違うサロンで働いていた人が僕の下に集まった状態。ルールを決めてやってはいたのですが、最初はバランスが悪かったですね。軸がブレて方向性がまとまらなくなってしまったというか…。でも、その後は新卒者を採用し続け、しだいに形ができてきました。基礎ができればみんなが同じことを伝えられます。サロンの強みや個性ができてきて、階段を昇るような感じで成長できていると思います。
蒲生 ちなみにコロナの影響はいかがですか?
松永 本質的なことは変わっていないですが、営業時間を見直したり、消毒や検温もサービスのうちという風に変わってきたと思います。その「安心感」はデザインと同じくらいお客様にとって大事なことになってきたんじゃないかと。
蒲生 クローズされた期間もあったのですか。
松永 一昨年の4月(緊急事態宣言時)に2週間クローズしました。
蒲生 自分ではどうすることもできない時勢の時こそ、自分の進む道をよく考えるいい機会かもしれません。
松永 本当にそうですね。コロナ禍にお客様と話していて、旅行や買い物に行けない、実家にも帰れないという中でも「髪はきれいにしに来ました」というお声をたくさんいただき、改めて美容とはとても価値のある仕事だと思ったんです。だとするなら、もう少しベースの賃金など美容師の豊かさが上がってほしいです。美容業界も多様化していて価格も様々で、それぞれ個別のブランディングがあるので、一口に「美容業界の底上げを」と言っても難しい問題がありますが、美容業界全体がもっと良くならなくてはいけないのではないでしょうか。ABBEYが美容業界をどう引っ張っていくかというのはおこがましいですが、ABBEYが高いクオリティを保ち、世の中と上手にリンクしながら存在意義を高めていければいいな、僕個人というより、ABBEYが輝くことで全体にいい影響を与えられればいいなと考えています。
蒲生 自分たちがまず輝き、自分たちの「好き」を示し続けていくことが美容業界のためになると思いますよ。
松永 会長は今後、美容業界はどう歩んでいけばよいとお考えですか。
蒲生 日本は豊かさが一定のレベルにあり、戦後77年平和が続き、いい時代です。だから危機感が薄い。そんな時こそ、過去の事例を探り、歴史の中にあるヒントを見つけることが大事だと思います。自分がするべきこと、今生きていることを大事にすることです。「生きている」価値、「生きていく」意味を今一度よく考えるとよいと思います。美容はそのどちらにも関わることですよね。
松永 とても勉強になりました。今日は貴重なお話ありがとうございました。
なぜこの仕事を始めたのか、
なぜ独立したのか。
そういう自分の『原点』を忘れないことが大切
蒲生茂


松永英樹(まつながひでき)
2002年独立BAPE CUTSを立ち上げる。2007年ABBEYを東京・南青山にオープン。サロンワークを中心にファッション誌、広告、業界誌など様々なヘアメイクを手掛けるとともに、美容商品の開発や講習活動も行っている。
Photo / Kazuya Kagohara
取材・掲載協力



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