SNIP STYLE 2022年9月号掲載 取材・掲載協力 株式会社コワパリジャポン
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未来ある美容業界、その先へ!
国内外に12店舗を展開するNORA代表の広江一也さんがゲスト。カリスマ美容師ブーム時代に頭角を現し、自由な発想力と揺るぎない信念でスタッフを引っ張る広江さんに、今の美容業界はどう見えているのか…。また、これからの美容業界でどう生き抜いていけばよいか、蒲生会長が広江さんの考えや疑問を真摯に受け止め、言葉を贈ります。
理念をぶらさずに前に進もうと。
1つ1つの積み重ねが未来になると信じて
広江一也
蒲生 5月末に行われた『ASIA BEAUTY EXPO 2022』でのNORAさんのステージも好評だったと聞いています。
広江 ありがとうございます。3〜4年ぶりのステージだったこともあって本当に楽しかったです。この3年間、閉塞感がずっとありましたから。出演者と観ていただいた方々、両方の熱気をすごく感じて、オンラインとは全然違う、リアルだからこその臨場感を味わうことができました。
蒲生 その後、何かよい影響はありましたか?
広江 先日、会社説明会を行いましたが、過去最多と思えるほどの学生さんに来ていただきました。
蒲生 そういう効果もあってよかったですね。

広江 ここ数年、コロナや戦争の影響もあって、世界中、やっていることがどんどんミニマムになってきている気がしていました。最終的に効率よく経営しているところだけが残る世の中なんてつまらないと思うんです。もっとオートクチュールやクリエイティブな世界観が必要なのではないかと。そこが開花すればもっと面白い世の中になる、そんな気持ちを込めてステージを作りました。
蒲生 なるほど。確かにその通りですね。ところで、NORAさんはフィリピンにもサロンをお持ちですよね。
広江 はい。マニラに2店舗、郊外に最近1店舗出しました。
蒲生 フィリピンの美容事情はいかがですか?
広江 フィリピンは人口が約1億1000万人、GDPはコロナ前だと毎年7%アップしていて、日本の1970年代後半と同じくらいの成長率です。フィリピンの若い美容師や子どもたちは、もっと自分を高めて成長したいという前向きな気持ちが強いんです。僕たちは当たり前のように社員教育をしますが、彼らからしてみたら、何かを習うのにはお金がかかるのに、給料ももらえて技術も教えてくれるって、いったい何の得があるんですかという…。恩返しするとか誰かのために何かしてあげるという日本人の感覚は、フィリピンの方からは素晴らしいことだと思われているようです。フィリピンは日本のような免許制度ではありませんから色々な人が面接に来ます。実は、元自転車便のドライバーをしていた子が、今では売上トップなんです。
蒲生 美容を通じて美容文化の向上やその国の人たちの生活の向上に貢献できるのは素晴らしいと思います。
広江 ありがとうございます。フィリピンを見て、日本が本当に恵まれていることを実感します。

蒲生 広江さんにとってもいい体験ですね。ところで広江さんは会社員を経て美容の道に進んだとお聞きしましたが。
広江 そうなんです。高校卒業後は大手ゼネコンに就職しました。基礎設計に携わっていたのですが、自分の仕事が最終的にどんな風に喜ばれるのかがわからず、もどかしく感じたことと、男性ばかりの環境でしたから真逆の世界に憧れ(笑)、元々好きだったファッション関係の道に進もうと思いました。結果として美容学校に入り、1997年東京の大手サロンに入社しました。猛烈に忙しい毎日を過ごす中で経験を積み、2007年に東京・表参道にNORAを立ち上げたんです。
蒲生 それ以来、長いお付き合いになりましたね。
広江 ありがとうございます。独立してすぐにガモウさんにお声をかけさせていただいたのですが、とても親切にご対応いただいたのをよく覚えています。
蒲生 いえいえ。僕らはすべての美容師さんがお客様だと思っていますし、今、お取引しているお客様が未来のお客様を呼び寄せてくれると思っています。NORAさんの成長は順調でしたか?
広江 そうでもない…かもしれません。オープン翌年にはリーマンショックが、4年後には東日本大震災が起こり、税理士さんから「このままの状態で続けていたら大変なことになる」と言われていたのに、僕には大手サロンに在籍していた頃からの漠然とした自信があり、あまり真剣に捉えていませんでした。しかし、税理士さんの言葉通り大変なことが次々に起こり、もう限界かもと思うことも何度かありましたね(笑)。
蒲生 そうだったのですね。それをなんとか乗り切ったと思ったら今度はコロナ禍ですからね。誰も予測できないことに抗うことはできません。緊急事態宣言の時はNORAさんも休業したのですか。
広江 いえ、しませんでした。スタッフには「1人でもやる」と言ったんです。出社しないことを選んだスタッフには通常の1.5倍の給料を払い、有給扱いにしてスタッフの生活と雇用を守ろうと思いました。ビジネスの判断として、ここが勝負の分かれ目だと思ったんです。その結果、顧客が離れることもほとんどありませんでしたし、他のサロンが休業しているのでNORAに来たという方が今も通ってくださったり。僕は美容師ですから、お客様が1人でも来るのならお店を開けなければいけないと思っています。
蒲生 強い信念をお持ちなのですね。
広江 NORAはベンチャー企業なのでどこかで勝負をかけて他とは違うことをやっていかないと、広く認知してもらうのは難しいと考えています。そこで経済産業省が推進する『COOL JAPAN戦略』のプレゼンに参加し、美容業界で初めて参入することができました。香港でのイベントに参加するなどとてもいい経験ができたと思います。大手サロン時代、先輩方の姿を見て「誰もやっていないことをやる」という感覚が自然と身についていたのかもしれません。これからも地道にがんばっていきたいです。
蒲生 ゼネコンからスタートして、今ではサロンのオーナーになって。サロンも大きな組織になりましたね。
広江 いえいえ。僕が会長と対談させていただけるなんて思ってもみませんでした。会長の存在があまりに大きく、空想の世界の方なんじゃないか?と思ったくらいです(笑)。60年もトップランナーでいらっしゃる会長にぜひお聞きしたいのですが、これからの美容業界はどうあってほしいとお考えですか?
蒲生 こうあってほしい、というのはありませんが、美容師さんは1人ひとりみな経営者のようなものだから、自分を見失わずに自分の考え方や夢を叶えるために個々に努力していくことが大事です。経営者なら揺るぎない組織を築き、思いと情熱を持って自ら率先して行動することが重要だと思います。
広江 なるほど。勉強になります。僕は独立した時、しっかりとした理念を掲げたいと思いました。お客様が多ければいいとか、カッコよければいいということではなくて、どこを目指すのかという理念をぶらさず前に進もうと思いました。会長が言われたように未来はわかりません。今を一生懸命がんばり、1つ1つの積み重ねが未来になると信じています。また、僕も含め、若い美容師にもどんどんチャレンジしてほしいです。
蒲生 そうですね。前向きにチャレンジしていけばチャンスのある業界だと思いますよ。
広江 僕もそう思います。今日は貴重なお話をありがとうございました。
未来は誰にもわからない。
前向きにチャレンジしていけばチャンスはやってくる
蒲生茂


広江一也(ひろえかずや)
NORA代表取締役。大手ゼネコンに勤務後、美容学校を経て都内有名店に入社。店長を務めた後、独立し2007年表参道にNORA設立。その後も青山、銀座、渋谷、大阪、フィリピンなどで店舗を展開。業界の枠を超えたさまざまな取り組みも積極的に行っている。
Photo / Yukie Sugano
取材・掲載協力



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