ガモウニュース5月号 撮影の舞台裏 Diva Hair_馬生 敬太氏

Making Cover LookMay.16.2018

今号のGAMO NEWSテーマは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見することを意味する「Serendipity」。カバー&ヴィジュアルは、クリエーションで数々の受賞歴がある『Diva Hair』(岡山)の馬生 敬太氏です。撮影で起きた、素敵なSerendipityを感じてください。

 

馬生氏がイメージする「Serendipity」とは?

難しいテーマでしたね。2ヶ月間ずっとSerendipityのことを考えてきました。例えば、偶然の風で顔に髪が掛かり美しいスタイルが生まれることもSerendipityですが、それではありきたりで面白くない。そこで僕は色から入りました。神秘性・創造性・多幸感というキーワードもいただいていたので、ベースは白。混じり気のないところに色々なものが重なり合って偶発的に何かが生まれることをイメージしました。

今まで僕のクリエイションはThe作品という感じで、がっちり創ることが多かったのですが、今回のテーマを機に、今までのものをぶち壊して一歩先に行きたい、自分の中に何か新しいものが生まれたらという気持ちで創りました。シュールさを追求した、ちょっとありえないストーリーですが、ヘアもしっかり創られているという感じで面白い作品に仕上がったと思います。

実は僕たち、マスキングテープの聖地が岡山だとは知らなかったんです(笑)。これもSerendipityですね!

 

表紙の作品

 

中面の作品(右)

 

中面の作品(左)


「OLAPLEX」を使ったダメージレスのカラーとパーマ

モデル選びは、いつもこだわっています。イメージと表情や骨格が合った人を探すのですが、今回は偶然にも2人の素が似ていて面白いなと感じました。

<ショートスタイルのポイント>
ショートのモデルさんはパーツもしっかりしていて目力も強いので、オンカラーせずにブリーチしただけの状態の方がハマるのではと思いました。ブリーチ4回、パーマ4回をしている髪だったので、ケミカルダメージを軽減するため処理剤に「OLAPLEX」を使いブリーチしました。使うと使わないのでは断然違いが出ますね。断毛もしませんでした。

スタイリングは毛先の動きぐらい。なるべく作り込みたくなかったので、シャンプー後に軽く髪をといた状態で一度、テスト撮影をしました。そこから180度変えるのではなく、20度ぐらいのところまで少しいじるぐらいが抜け感のある作品に仕上がると思っています。やらない勇気、盛らない勇気も必要なんです!

 


<パーマスタイルのポイント>
ストレートの状態からからパーマをかけました。根元、中間、毛先でダメージレベルが異なっていて、毛先には少しブリーチが残っている状態だったので、パーマにも処理剤に「OLAPLEX」を使いダメージを抑えています。

表紙は2人を対比させた感じにしたかったので、ショートがミニマムなので、パーマはマキシマムにボリューム感を持たせて。ワンレングスで裾広がりのシルエットにしました。

 


デッサンを描いてイメージを共有

僕は、ポップな中にも毒っ気があるものが好きです。違和感のあるポージングは、当初からイメージしていました。簡単にデッサンを描いてカメラマンさんやスタッフとイメージを共有しています。

でも、僕がカメラマンさんに強い意思を伝え過ぎてしまうと自分が想像した以上の作品は出来ないと思うので、撮り方はある程度お任せして、互いにセッションを楽しみながら創りあげていきます。表紙も最初に考えていたものとは画角が変わっていますが、上手く引き出していただきました。これもSerendipityですね。


インスピレーションのヒントになっているものは?

僕は、パリコレなどのコレクションからインスピレーションを得ることが多いです。トレンドのファッションをそのまま着せるのではなく、ファッションの素材をメイクに活かしたり、自分の創りたいものに落とし込む。今季だったらピンクやブルー、イエローなど淡いカラーが流行色ですが、それをメイクで表現するのはベタなので、今回はマスキングテープで顔まわりに取り入れました。

メイクも自分でやります。僕はヘアからクリエイションを考えると、なかなか良いフォルムが浮かばないのですが、メイクから入ると浮かび上がるのです。

以前はコンテストなど勝負をかける作品の時だけは頼んでいたのですが、なかなか結果が出せずに悩んでいた時、一度、自分でメイクもやってみようと思ったのです。その作品がKHAでグランプリを受賞し、一気に自信に繋がったのです。svk(ヘアメイクスクール)でクリエーションのメイクを勉強し、あり得ないところに何かを乗っけてもいいという自由な着想を得て、さらに自分の壁が破れました。クリエイションメイクが楽しくなると、基礎の技術も必要になってきてベーシックメイクも学び直しました。

 

今回の撮影でもマスキングテープの裏にファンデーションを塗ってテープが剥がれているところが出ているようなメイクをしています。そういう細かいクリエイションメイクが楽しくなっていって、そこから、サロンメイクでお客様をいかに美しく見せるかにたどり着き、やりがいを感じています。自分をメイクすることのない男性の美容師さんは、僕のようにクリエイションメイクからの方が入りやすいのかもしれませんね。

クリエイションに本格的に取り組んだのは開業してから

僕がクリエイションを始めたのは20代の時。先輩の撮影に立ち会い、「こういう世界があるのか、かっこいいな」と思ったことがきっかけで、一気に美容師の仕事が楽しくなりました。休日に作品づくりを始めたのですが、コンテストに出すわけでもなく自己満足だけで創っていたので2、3年でやらなくなっていきました。

本格的に取り組むようになったのは自分の店をオープンしてからです。従業員にも、美容の仕事に楽しさややりがいを持ってもらうためでした。自分が先頭切って結果を出さなくてはと、がむしゃらに8年やってきて、スタッフの半分がクリエイションをやるようになりました。

 

クリエイションをやることのメリットは、テクニックが向上すると言うより、細部を見落とさない力がつくと僕は考えます。クリエイションを始めた頃は、撮影後に仕上がりの写真を見て、現場で見過ごしていたメイクの汚れや、いらない髪の毛にきづいて後悔することもありました。 アシスタントのときからクリエイションの撮影をしていると、サロンワークならカラー剤が一滴、お顔に散っていてもいち早く気づくことができたりと細部に気を使うことができます。木を見て森を見ずという言葉がありますが、アシスタントがお客様の心を掴むには、まず木を見て気に入っていただくことが大切だと思います。

クリエーションで精度を高めた思考をしていると、普通では見えない力がつくし、また、ポジティブに上を見ていれば色々なことが見えてくると思うのです。今、メイクが楽しくて、アイラインが上手に引けるのも小学校の頃、親に行かされていた書道が活きていると思うのです。そう思うと親に感謝しかないのですが、マイナス思考の人は無理やり行かされたという否定で終わってしまう。今まで生きてきた過去の経験をどれだけ点で繋げられるか。まさにSerendipityだと感じられるかだと思いますね。

若い美容師さんにメッセージ

岡山では、僕がクリエイションを始めた頃、同時期にやり始めた美容師さんは大勢いたけど、2、3年経つと熱が冷めていき、今も頑張っている人は一部だけになってしまいました。

全体数が変わらないのは、クリエイションを始めた美容師さんが足されているだけ。始めたばかりの人と8年続けている少数派の僕が横に並んでいるのだから、コンテストで結果を出せているだけ。ただ、やり続けることが大切なのです。過去を否定せず、楽しみながら、やってきたことを繋げていく。

食わず嫌いでクリエイションをやらない人も、とりあえずやってみたらいいと僕は思います。コンテストの賞ありきの表現ではなく、自分の好きな表現をとことん追求してみてください。

今後、生き残っていく職業の中に、アートディレクターやクリエイター、ファッションデザイナーと一緒に美容師も注目されています。労働環境などいろいろありますが、創造する仕事というのは無くならないものだと思うので、一緒に頑張っていきましょう!

COVER LOOK BY KEITA BASHO_Diva Hair
HAIR&MAKE-UP/KEITA BASHO(Diva Hair)
COLOR/KAREN SEKI(Diva Hair)
PHOTO/MASAYA TANAKA

馬生 敬太

2010年、Diva Hair設立。大阪で勤務後に地元岡山で独立。顧客0の状態から、集客サイトに頼らず地道に集客した結果、お客様との深い関係性を構築できその教えをスタッフも引き継いでいる。2015年、KHAオフィシャル部門 グランプリ。同年、JHA ニューカマー オブ ザ イヤー優秀新人賞。2017年、JHA大賞部門ノミネート。

http://divahair.net