ガモウニュース9月号 撮影の舞台裏 MAGNOLiA_MARBOH氏

Making Cover LookSep.21.2018

GAMO NEWS、今号のテーマは、魔法をかけたかのように、うっとりさせる、心を奪う、魅了するという意味の言葉「Enchant」。
カバー&ヴィジュアルを手がけていただいたのは、幅広い女性たちへのパーマ提案を得意とする『MAGNOLiA』のMARBOH氏です。

 

MARBOH氏がイメージする「Enchant」とは?

自由度の高いテーマをいただいたので、今回、自分の中でサブテーマとさせていただいたのは、躍動感やスピード感をヴィジュアルの中でどう表現するか。

「動」に「静」の演出を少し入れることで逆に動きがフォーカスされるかなとか、全体のバランスをどのぐらいのさじ加減でやれば躍動感が出るのかなど、依頼をいただいた時からずっと考えてきました。

写真は静止画なので止まると「髪型」になります。しかし、髪型は流行を作るものだから、過ぎた後は古くさくなってしまう。だったら、素材をそのまま使えば古くならないのではないかというところに行き着いたのです。

素材はフィックスさせているけれど、見せ方として相反する方向に動かしてあげることで躍動感やスピード感が生まれる。僕はそれをドラマティックと言っています。サロンワークでも髪型を作ってから最後は動かし、ドラマティックに仕上げてからお客様を帰します。今回は、サロンの延長線上でモード感を表現しています。

 

表紙の作品

 

中面の作品(右)

 

中面の作品(左)

サロンコンセプトの「パーマ」スタイルに躍動感を

「髪型にしない」というのは、自分が今まで美容をやってきた中で最終的に行き着いたところです。髪型ってカッコよくないなと思って、2年前程前から素材のクリエイションをしようと取り組み始めました。

高級料理店のシェフみたいなイメージです。皆さん、最終的には素材に行き着きますよね。それまではいっぱい調味料も使って色々な味付けをやってきたと思う。それがあったから「味付けをしないでも美味しく食べられるんじゃないの?」という料理になるのだと思います。

今回の流れとしては、躍動感・スピード感というテーマを作り、それに当てはまる素材と衣装をセレクト。最後に自然の「風」と「水」を使って味付けをしたという感じです。

当サロンの技術的なウリは「パーマ」なので、今回は2人ともパーマスタイルです。「この髪型、どういう風にしているんだろう? でも、パーマだよね」と、皆さんがざっくりわかるぐらいの感じで素材を創っています。

<ショートスタイルのポイント>

ショートスタイルは、こういった作品撮りだとアウトラインを強調するスタイルになりがちですが、そうすると髪型になってしまいます。今回のテーマは、そこから抜けた表現をしていくことを大前提としたので、パーマで浮遊感、立体感を出しました。

中面をモノクロで撮影することを考え、コントラストをつけるために、カラーは根元10㎝ぐらいを黒で染めた金髪のエクステを5、6カ所につけています。

少し濡れた髪にすると白黒のコントラストが強く出るので、ホホバオイルをスタイリング剤としてつけ、フェイスラインの立ち上がるところだけジェルをつけて仕上げました。

<ロングスタイルのポイント>

最近のウェーブの特徴は、アイロンで巻く時もそうなのですが、毛先を巻きおさめないでストレートにする。そうすることで今っぽくなります。

髪の毛をそのまま風で煽ると全部がふわっと動いてしまいます。「動」を活かしたいけれど「静」も大事。留まってほしい髪の毛が必要なので、動きすぎないように4カ所だけ毛先をゴムで束ねています。束感も細い毛束と太い毛束をミックスしました。ゴムで留めたところから毛先を絞りあげると空気を仕込んだみたいにふわっと膨らみ、毛先はストレートに。

風で煽った時、自然と髪が張り付くように、顔にもオイルを塗っておきました。

クリエイションには「現場対応力」が必要

ビジュアルのイメージは頭の中でできていました。チームでイメージを共有するため、スタッフには、躍動感、スピード感あるビジュアルをピックアップしてもらいました。コンテンポラリーダンスやバレエの写真など、とにかく髪型になっていないものです。

衣装も揺れるもの、動くもの。表紙に関しては髪を動かすから服はシンプルに。素材感を消すヌーディなもので髪の毛に目がいくようにしました。

ヘアの方は、決めてかかって用意をし過ぎると失敗しやすい気がするので、素材は最低限の必要な仕込みをして、ざっくりとしたところで決めておいた感じです。

その後は、現場対応力が必要になりますね。僕らサロンワーカーは現場対応力に長けていると思います。色々なレングス、髪質のお客様がいらして、短い髪を長く見せたいという方もいるし、難しい注文にいつも対応していますから。

特に今回の撮影は「こういうのって素敵だよね」「かっこいいよね」と感覚を共有できるメンバーが揃っていたのでやりやすかったです。皆、楽しんで撮影ができたと思います。

クリエイションのテクニックはサロンワークから生まれる

撮影でのアイデアやテクニックは、僕の場合、お客様から始まります。「髪型にしない」というテーマが一つ決まると、目指すところに近づくために何が必要かを突き詰めていく。そうするとドライヤーの乾かし方ひとつ、カット、パーマの巻き方ひとつ変わってくるのです。

例えば、ボリュームを出したいとお客様からオーダーがあると、「上から乾かしているから、ふわっとしないんじゃないの」と、下から煽りながら乾かしてみる。するとワンサイズぐらい頭が大きくなる。そこから削りの作業が入るのですが、そうやって、今までタブーとされてきたことも、あえてやりながら独自のテクニックを習得していきました。

そのテクニックを聞きたがる人には、「こうやってカットして、こうやって乾かして」と教えるのですが、皆、そこだけ聞くから結局、自分のものにはできないことが多い。何でそこに行き着いたのかという過程が大事なのです。

テーマに沿ったクリエイションができるように練習しよう

僕も20代の頃はANTIの小松利幸さんに言われましたよ。「若いのになんでアイデアがないんだ」と。

アイデアがあってもテクニックがなかったのでしょうね。自分ができるテクニカルで創作すると見たことがあるクリエイションしかできないのです。だからある程度、経験則なのかもしれないですね。

若い人たちは、怖いからできる範囲の中で間違えのないスタイルを創る。登竜門としては絶対ありだと思うのですが、そこから誰が最初に抜けていくか。

今はInstagramやFacebookで作品を発信して、自分の世界観ってなんだろうと探っている若い美容師さんたちが増えていますね。でも、編集さんやクライアントからテーマを投げられた時に、クリエイションできるかがプロの領域。自分の好きな世界観だけでなく、次はテーマに沿ったクリエイションができるような練習をしたらもっと成長できると思います。

若い美容師さんにメッセージ

僕はあえて皆が苦手とすることに取り組んで今に至っています。パーマって皆、苦手でしょ。僕はそこを逆に取り組んでフォーカスしてもらえたのです。

カットやカラー、アレンジは得意の上位に占めていると思うので、皆、色々な練習すると思う。パーマやケミカルはやらない人たちが多い。でも、プロになってしまうと苦手なところは避けては通れないんだよね。

パーマをサロンのコンセプトにしたのは10年前。「大人の女性を美しくしていくサロン」には、必ずパーマが必要になってくると思ったのです。現在は、「復元パーマ」と言って1回カットするとパーマが復活する、巻きテクニックをセミナー活動等で広めています。

今、当店のお客様はパーマに対して何の抵抗もないけど、パーマを避けている美容師さんは、お客様もパーマに抵抗のある方が多い。業界がパーマに抵抗のあるお客様を作り出してしまったのだと思います。

もう一つ、僕が苦手だったケミカルを勉強しはじめたのは40歳を過ぎてからです。お客様も自分も年齢を重ねてきて、エイジングはケミカルダメージとは違うダメージがあるから、「どう対応したらいいのだろう?」と思ったのがきっかけでした。

シャンプーソムリエの認定資格を取得し、勉強していくことで、商品の見極めにも繋がりました。また、その人にとって何がいいのか専門的な知識を持ってアドバイスできるようになるとお客様も喜んでくれて、そこから一気に物販の高額商品が動くようになったんですよね。

得意なところで勝負をするのもいいけど、上には上がいるし、競合も多い。でも、皆が苦手な分野を得意にすると、すごいチャンスがあるかもしれないよ。それが、僕からのメッセージです。

COVER LOOK BY
MARBOH_MAGNOLiAHAIR/MARBOH(MAGNOLiA)
MAKE-UP/CHINATSU(MAGNOLiA)
FASHION STYLING/CHINATSU、HINATA(MAGNOLiA)
PHOTO/YUSUKE MATSUYAMA
MODEL/MAYU、LICHITENSTEIN JENNIFER

MARBOH

2008年にMAGNOLiAを青山にオープン。日本全国で美容師向けセミナーの講師を務める他、テレビ、雑誌などでも活躍。文化人、デザイナー、アスリートや音楽家からも支持を受けている。2016年に2店舗目となる「MAGNOLiA Omotesando」をオープン。著書に女性モード社「BASIC OF BASIC」、髪書房「やさしいパーマ新BASIC」など。

http://www.hairmake-magnolia.co.jp